関西宝飾業界のトップランナー 株式会社DISC様
株式会社DISC様は、指輪やペンダントなどの貴金属の企画、製造、加工に加え、製品の卸し、小売まで、幅広い事業を展開されています。ここまで一貫して手掛けられるのは、関西の宝飾業界では珍しく、非常に画期的な存在です。百貨店など大手企業からも厚い信頼を得ておられます。
上垣社長
当社は1975年に父が創業して始まりました。組織化した事業を進めるため、2013年に私が株式会社にしました。昔は全て手作業が行っていましたが徐々に社内の設備を整え、2014年には3Dプリンターを導入。現在は製造する商品のほとんどを、自社でCADデータを作成し、3Dプリンターで型を起こしています。
山口
2015年に初めてお会いした時、そのお話がすごく印象的でした。当時、まだ関西の中小宝飾企業でそのような設備を導入しているところは稀でしたから、「おもしろい会社だな」と興味が湧き、後日会社を訪問させていただいたんですよね。あの時、社員さんは3名程度でしたが、この5年で30名にまで増員し急成長を遂げられましたね。
上垣社長
その訪問を機に、山口さんにいろいろ相談するようになったんでしたね。
もともと私は、父のような貴金属を扱う職人になりたいと思っていました。しかし、ちょうど山口さんと出会う少し前、父から「この業界で成功しようと思うなら、職人は辞めた方がいい」と言われたんです。たしかに関西の宝飾業界は、関東や海外の業者に押され、どんどんマーケットが小さくなる一方で、父は職人として一人で地道に事業を営んできましたが、自分の時代はさらに厳しい状況になるはず、「今後は、製造から小売まで社内で一貫して対応できなければ関西で仕事を続けるのは無理だろう。そのためには、数の力が必要だ」そう考えた私は、会社を組織化し、スタッフを雇用。未経験者を職人に育成し、企画から設計、CADデータの作成、3Dプリンターによる成型、鋳造、仕上げ……とそれぞれ分業化を図って、社内で一貫したものづくりができる環境を整えました。
山口
DISKさんは徐々に社員さんを採用され、組織として大きくなっていきましたね。デジタル技術を積極的に取り込みながら業態を徐々に変革しています。それに伴い、私は上垣社長に「とにかく社長業に専念してください」と繰り返しお話ししました。上垣社長はもともと職人さんなので、人に頼むよりご自身で手を動かされる方が楽なんです。ただ、それでは作業に没頭するあまり社内全体に目が届かなくなってしまいます。社長は、会社の今後を見据えることが仕事、現場はスタッフに任せるべきなんです。私は、どの仕事を人に任せ、どの部分をIT導入によって解決するか、社長業に専念するための環境づくりをアドバイスしました。また社長の思いを理解し、現場に浸透させてくれる、要となるスタッフの育成に向け「積極的にコミュニケーションをとり意思の疎通を図ってください」という話もしましたね。
上垣社長
山口さんがおっしゃる環境を整えるには、結局1年ほどかかりました。頭では分かっているのに、なかなか行動が伴わず、現場に立つと、つい作業にのめり込んでしまうんですよ。なかなか実現できず、何度も同じ相談をしましたが、山口さんは本当に根気よく付き合ってくれました。おかげで、「職人」から「経営者」へ意識が変わると、自分が現場に立ち続けることがいかに危険か気づくようになったんです。それにあわせて社内の雰囲気も変わってきました。例えば、発注ミスが発生した時、担当者に「今後、発注を間違いなく進める方法を考えてもらえない?」と相談するだけで、私が改善指示を出さなくても、自分たちで仕組みを作ってくれるようになりました。山口さんのアドバイスによって私の中に小さな変化が起こると、それが社内に少しずつ浸透し、結果的に大きな変化が起きています。
山口
社長は、日夜現場に立ち、会社のことを一生懸命考えられているので、すでに答えを持っておられます。私は、社長のお話を聞き、他社の事例を紹介して、背中を押しているのです。
上垣社長
その「話ができる」ということのが、心強いんですよ。社長職は、大きな決断をするシーンがたくさんあるものの、なかなか相談できる人がいません。特に中小企業の経営者は、それで苦労している方も多いはず。私は山口さんから客観的な意見や、適切な事例を聞かせてもらえるので本当に得をしています。私が思いつくまま話すことを整理してくれるので、自然と必要なことに気づけるんです。もし山口さんがいなかったら、もっと行き当たりばったりの経営だったでしょうね。
山口
私は基本的に、「何か気になることがあったら、なんでも話してください。まずは一度聞いてから、できること、できないことを判断しましょう」というスタンスなので、どんなお話でも喜んで聞かせてもらいますよ。
最近のお話を伺っていると、このあたりで一度組織体を整える必要があるでしょうね。スタッフの数が増え、扱う商品の数も増えると、どうしてもモノの流れと情報の流れが混乱します。そこに人の管理も加わると、余計ややこしいことになります。次のステージに上がるためにもぜひこの段階で改善しておきましょう。
上垣社長
今の時代、わざわざ組織化しなくても、個人で貴金属を作ってSNSで販売することもできます。そういう人も多いでしょう。でも誰でもできるということは、その分、大成功もしづらいということです。泥臭い考え方かもしれませんが、私は、きちんと組織を形成し、一つひとつの事業を組み上げていくことで、盤石な企業に成長していけると思っています。特にうちのように高価な商品をお預かりする会社は、組織としての信頼、安心感が必要不可欠です。10年、20年先のために、今、その土台をしっかり築いておきたいです。
製造業が人がと設備を揃え、事業が成長し、卸事業、小売事業へ……という流れは、理想的な発展形であり、DXの第一歩です。ただ、これはどこの会社でもできることではありません。株式会社DISC様の場合、上垣社長が職人から経営者へ脱皮された結果、会社として大きく成長されたと感じています。ステージに合わせて常に新しい課題が出てきますが、悩みの質は確実に変わってきています。この勢いを継続させるため、今後も社外CIOとして、上垣社長の"頭の中の整理"をお手伝いさせていただきたいと思います。
株式会社DISC
代表取締役社長 上垣 隆一 様
高校卒業後、貴金属職人として腕を磨いた後、2013年に先代の意思を継ぎ株式会社DISCを設立。最新設備の充実と、職人の育成によって事業拡大を図り、現在は製造から小売りまで一貫して担うビジネスモデルを実現。関西随一の宝飾企業に成長させた。
ウェブサイト「株式会社DISC」