散らばった情報を即座に活用できる仕組みづくり
はじめに
生成AIのコンサルティングを行っていると、最近特に増えているのが「社内のデータやマニュアルを活用したいけれど、どこから手をつければいいかわからない」という相談です。
多くの企業で、就業規則、機器のマニュアル、業務フローなど、重要な情報はPDFやWordで作成されています。しかし、それらは社内の共有フォルダに眠ったまま、必要なときに探し出すのに時間がかかったり、そもそも存在すら忘れられていたりします。
「マニュアルを整理すべきなのはわかっている。でも、どうやって?」
そんな悩みに対する、シンプルで効果的な答えが「NotebookLM」です。
なぜ今、社内マニュアルの活用が課題なのか
情報は増えているが、活用されていない
企業には膨大な情報が蓄積されています。就業規則、設備の操作マニュアル、業務フロー、顧客対応マニュアル──それぞれが異なる部署で、異なるフォーマットで作成され、バラバラに保管されています。
問題は、情報があっても、必要なときにすぐ取り出せないことです。
例えば、新入社員が「社内Wi-Fiの接続方法を知りたい」と思ったとき、どこを見ればいいのかわからない。ベテラン社員でも、年に一度しか使わない機器のマニュアルを探すのに30分かかる。こうした「情報はあるのに使えない」状況が、日々の業務効率を下げています。
特に困るのは「たまにしか使わない情報」
私自身、大学で週に1度だけ講義を行っています。週90分の非常勤講師という立場なので、学内のルールや設備の使い方を完璧に把握しているわけではありません。そこで、大学から提供されたマニュアルをNotebookLMに入れて、「プロジェクターの接続方法は?」「出席管理システムの使い方は?」といった質問をその場で解決しています。
企業でも同じです。頻繁には使わないけれど、いざというときに必要な情報ほど、すぐに取り出せる仕組みが重要なのです。
NotebookLMとは何か
Googleが提供する「情報整理・活用ツール」
NotebookLMとは、Googleが開発した、複数の資料を読み込んで質問に答えてくれるAIツールです。PDFやWord、テキストファイルなどをアップロードするだけで、その内容を理解し、必要な情報を即座に引き出してくれます。
最大の特徴は、「特定の資料だけを参照して回答する」点です。
通常のChatGPTなどは一般的な知識をもとに回答しますが、NotebookLMは、あなたがアップロードした資料「だけ」を参照します。つまり、社内の独自ルールや専門的なマニュアルでも、正確に答えてくれるのです。
なぜ「早く、簡単に、効果的」なのか
NotebookLMの魅力は、その手軽さにあります。
- 特別な設定は不要:PDFをドラッグ&ドロップするだけ
- 専門知識は不要:プログラミングやデータベースの知識はゼロでOK
- 即座に使える:アップロードしたその瞬間から質問できる
「何か新しいツールを導入しよう」と考えると、システム構築やトレーニングに数週間かかることも珍しくありません。しかし、NotebookLMなら、今日の午後から使い始めることができます。
実際の動作を共有します
以下のリンクにアクセスしてみてください。
これは「モデル就業規則」という公開情報をもとに、当社の実態に合わせて少し大げさに書き換えた内容を共有しているものです。就業規則の“マニュアル”として利用できます。
たとえば、プロンプト欄に「遅刻したときは誰に連絡すればいいの?」と入力すると、「社長に連絡してください」という回答が返ってきます。
このように、社内のマニュアルを細かく読まなくても、大事なポイントだけをすぐに把握できるのは、とても便利な使い方だと思います。
NotebookLMの実践的な活用例20選
実際に、NotebookLMはどのような場面で威力を発揮するのでしょうか。以下に、20の具体例をご紹介します。
社内業務での活用(10例)
- 勤怠管理マニュアル
PDFをアップロードし、FAQボット作成。新人からの質問に自動回答し、対応時間を短縮。 - 社内規程集
規程をソースにチャットボット化。「このルールはどう適用される?」という質問に即時回答、問い合わせが減少。 - 業務フロー手順書
手順書を読み込み、ステップバイステップのガイドを生成。研修時間を半減。 - 新人研修マニュアル
研修資料をアップし、動画解説を生成。OJT負担を軽減。 - 製品仕様書
仕様書を基にQ&Aボット作成。営業チームの顧客対応効率が2倍に。 - プロジェクト管理マニュアル
資料を分析し、タスク抽出・要約。進捗管理時間を短縮。 - 営業手順書
商談フローをアップし、シナリオガイド生成。提案書作成を高速化。 - バックオフィス規程
規程集をソースに自動回答。人事問い合わせ対応を3分以内に完了。 - 会議運営マニュアル
録音データをアップし、議事録ガイド作成。フォローアップ効率が向上。 - 情報セキュリティマニュアル
ポリシーを読み込み、クイズ形式のテストを生成。コンプライアンス研修を強化。
顧客サポートでの活用(2例)
- カスタマーサポートマニュアル
FAQ資料をアップし、チャットボット化。対応速度が3倍に、満足度も向上。 - トラブルシューティングガイド
ガイドラインPDFを基に、問題解決ステップを抽出。コールセンターの負担を軽減。
医療・専門分野での活用(2例)
- 医学ガイドライン
PDFをアップし、臨床適用ポイントを抽出。レビュー時間を削減。 - 薬剤師業務マニュアル
手順書をソースにQ&Aを作成。病棟業務での誤操作を防止。
教育・研修での活用(3例)
- 補助金申請マニュアル
資料を読み込み、質問形式のメモを生成。申請作業を爆速化。 - 英語学習マニュアル
英語PDFをアップし、日本語要約・解説。学習効率が2倍に。 - 資格試験過去問ガイド
過去問を分析し、傾向をまとめる。試験対策時間を半減。
技術・開発での活用(2例)
- Pythonコードマニュアル
コードをアップし、使い方ガイドを自動生成。開発ドキュメント作成を簡易化。 - AV機器操作マニュアル
PDFをソースにサポートチャットボット。トラブル解決時間を短縮。
NotebookLMを導入するための3ステップ
では、実際にNotebookLMを社内で活用するには、どう進めればいいのでしょうか。
ステップ1:まず1つのマニュアルから始める
いきなり全社的に導入しようとすると、ハードルが高くなります。まずは、自分の部署でよく参照するマニュアル1つをNotebookLMに入れてみましょう。
例えば、就業規則、設備の操作マニュアル、顧客対応のFAQなど、「これがあればいいのに」と思うものから始めるのがお勧めです。
ステップ2:実際に質問してみる
マニュアルをアップロードしたら、実際に質問してみましょう。
- 「休暇の申請方法は?」
- 「この機器のトラブルシューティング手順は?」
- 「顧客からこう聞かれたら、どう答える?」
回答の精度を確認し、どんな質問に答えられるかを把握することが重要です。
ステップ3:チーム内で共有し、フィードバックを集める
効果を実感したら、チーム内で共有しましょう。「こういう使い方ができる」と具体例を示すことで、他のメンバーも使い始めやすくなります。
また、「こういう質問には答えられなかった」というフィードバックを集めることで、マニュアル自体の改善点も見えてきます。
NotebookLM活用で得られる3つの効果
- 情報へのアクセス時間が劇的に短縮
従来は「どこにあるかわからない」「探すのに時間がかかる」だった情報が、質問するだけで即座に取り出せるようになります。
- 新人教育・研修の負担が軽減
新人が自分で調べられるようになるため、先輩社員への質問が減り、OJT負担が軽減されます。新人自身も、自分のペースで学べるため、理解が深まります。
- マニュアルの「死蔵」を防ぐ
せっかく作ったマニュアルが「あることすら忘れられている」状態を防げます。NotebookLMに入れることで、マニュアルが「生きた知識」として活用されるようになります。
まとめ:今日から始める「情報活用」の第一歩
生成AIの時代、「情報をどう整理し、活用するか」がますます重要になっています。しかし、大がかりなシステム導入は必要ありません。
NotebookLMを使えば、今日の午後から、社内のマニュアルを「使える知識」に変えることができます。
まずは、自分の手元にあるマニュアル1つをアップロードすることから始めてみてください。きっと、「こんなに簡単に情報が引き出せるのか」という驚きを感じていただけるはずです。
情報を整理し、活用する──その第一歩を、今日踏み出してみませんか。