1. HOME
  2. 経営に強いIT部長のブログ
  3. 当社は、中小製造業の社長に「地図」を渡しています

経営に強いIT部長のブログ

2026/03/16 DX 当社は、中小製造業の社長に「地図」を渡しています

— 今回は、当社の仕事の内容をお伝えします —

「DXを進めたいんだけど、何から始めればいいかわからなくて……」

 

製造業の現場で経営者の方と向き合うとき、この言葉をよく耳にします。世の中には便利なデジタルツールが溢れています。そのツールを製造現場の方や経営者は、使う気は十分にあります。それでも、なかなか動き出せていません。

私たちがこの仕事を続けてきてわかったことがあります。うまく動き出せない本当の理由は、ツールでも予算でも、ましてや「やる気」でもないことがほとんどです。実は、もう少し根深いところに原因があります。

経営のビジョンは語れても、デジタルのビジョンは語れない

多くの経営者の方は、経営的な方向性についてはしっかりと言葉にできています。「新しい素材を使った製品ラインを立ち上げたい」「遊休資産になっている設備をもっと有効活用したい」「将来の幹部候補になる若い人材を育てていきたい」——こうした話は、情熱を持って語ってくださいます。

ところが、話題がデジタルやITツールに移ると、空気が変わります。「そのあたりは担当者に任せていて……」「何が使えるのかよくわからなくて……」経営的な意思決定には自信を持っている方でも、デジタル活用の具体的なイメージをはっきりと描けている方は、決して多くありません。

これは「デジタルに疎い」ということではありません。経営者がITの専門知識を持つ必要はないのです。ただ、「自分たちの経営の方向性に対して、デジタルをどう組み合わせていくか」という視点と言葉が、まだ手元にないだけなのです。

経営の地図はあっても、デジタルの地図がない

こうした状況で何が起きるかというと、経営者の意図が社員に「半分しか届かない」状態になります。

「新しい製品ラインを作りたい」という方向性は伝わっています。でも、「そのためにどのシステムを使うのか」「既存のデータをどう活かすのか」「どの業務をデジタルで効率化するのか」——こうした点は、誰も教えてもらっていません。

結果として、現場の担当者は自分の判断でツールを選び、バラバラに導入していきます。それぞれのツールは動いているのに、全体としてはうまく機能しない——そんな状況に陥っている会社が、実は少なくありません。

問題はデジタルリテラシーではなく、「デジタルの地図」が存在しないことにあります。経営の地図(ビジョンや方向性)はあっても、それをデジタルでどう実現するかを示した地図が、抜け落ちているのです。

「地図を渡す」とは、ビジョンとデジタルをつなぐこと

私がやっていることをひと言で表すと、「地図を作って渡す」支援です。ここでいう地図とは、経営者のビジョンとデジタル活用の方針を一枚の絵としてつなぎ、組織全体が共有できる形に整えたものです。

まず、経営者の方と対話を重ねます。「本当に実現したいこと」「10年後にどんな会社でありたいか」を丁寧に掘り起こしながら、同時に「その目標に対して、デジタルはどう機能できるか」を一緒に考えていきます。経営の言葉をIT活用の言葉に翻訳していくイメージです。

それと並行して、現場にも足を運びます。実際に作業をされている方々から話を聞き、日々の業務がどのように流れているかを書き起こしていきます。どこで情報が滞っているか、どの工程をデジタル化すると経営の意図に近づけるか——現場の声と業務フローを可視化することで、地図はより実態に即したものになります。

「自社がどこへ向かっているのか」と「そのためにデジタルをどう使うのか」の両方が見えてはじめて、現場の方々は自信を持って動き始めることができます。

ゴールは「一緒に走り続けること」ではなく「自走できること」

私が大切にしているのは、「伴走」というスタンスです。社長の隣に並んで、同じ方向を向きながら一緒に考える。上から答えを示すのではなく、現場の方々と同じ目線で課題を整理する。そういう関わり方を心がけています。

そして最終的なゴールは、私が関わり続けることではありません。地図を渡し、現場が自走し始め、「もう大丈夫です」と言ってもらえる状態になること。それが、この仕事の本当のゴールだと思っています。

支援者が抜けても動き続ける組織をつくること——それが「地図を渡す」という言葉に込めたもう一つの意味でもあります。

おわりに

DXとは、突き詰めれば「変革」です。新しいシステムを入れることでも、業務を効率化することでもない。会社そのものが、何かを変えていくということです。

その変革に対して、誰よりも真剣に向き合わなければならないのは、経営者自身です。「デジタルは現場や担当者に任せている」では、変革は起きません。「自社をどう変えたいのか」「デジタルを使ってどんな姿を実現したいのか」——その問いに、経営者が自分の言葉で答えを持っていることが、すべての出発点になります。

私がお手伝いしているのは、まさにその出発点をつくる部分です。経営者が変革への覚悟と方向性を言葉にし、デジタル活用の地図として組織に示せるようになること。そこから、現場は動き始めます。

もしあなたの会社でも「経営の方向性は見えているのに、デジタル活用だけがどうもうまくいかない」という感覚があるとしたら、それはデジタルの地図がまだ描かれていないサインかもしれません。一緒に、その地図を描き始めませんか。