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経営に強いIT部長のブログ

2026/09/13 DX 人が足りない会社で、まず「時間をつくる」を考える――中小企業のデジタル活用・第1回
人が足りない会社で、まず時間をつくるを考える。従業員が相談する様子

「人が足りない。でも、採用してもすぐに人が来てくれるわけではない」

中小企業の現場をご支援していると、こうしたお話をよく伺います。日々の仕事で手いっぱいになり、お客様への提案や社員の育成など、必要だと分かっている仕事が後回しになる。経営者の皆さんにも、心当たりがあるのではないでしょうか。

先日お話ししたセミナーでも、人不足への対応や、見積・営業業務の効率化に関心が寄せられました。そこでお伝えしたのが、「今いる人の時間をつくり、その時間を会社に必要な仕事へ振り向けませんか」という考え方です。

この連載では、中小企業が身近な業務から始められるデジタル活用を紹介します。第1回は、具体的な支援事例をもとに、何のために業務を効率化するのかを考えてみたいと思います。

忙しさの中に、繰り返している手作業はありませんか?

例えば、受注メールを読み、必要な項目をExcelへ転記する。別の資料にも同じ内容を入力する。進捗を確認するために電話をかけたり、別のフロアへ見に行ったりする。

一つひとつは必要な作業に見えても、情報の渡し方や共有方法を変えると、手間を減らせる場合があります。毎日繰り返しているからこそ、少しの改善でも積み重なっていきます。

電話対応や書類の転記など、日々の事務作業に取り組む製造業の従業員たち
日々繰り返す転記や確認に、改善のきっかけがあります。

もちろん、採用や人材育成も大切です。ただ、それらの成果を待つ間にも、今の仕事の進め方を見直すことはできます。私が現場でお伝えしているのは、まず、こうした身近な作業から時間をつくっていこうということです。

事務の効率化で、営業を支える時間が生まれた

私が支援している、従業員約20名の製造業の事例をご紹介します。当初は、製造に約10名、営業に約7名、事務に3名という体制の会社でした。

この会社では、デジタルの導入や業務の効率化を進めた結果、3名で担っていた事務の仕事を、2名で担えるようになりました。では、もう1名はどうなったのでしょうか。

その方は、営業担当者を支援する仕事を担うようになりました。

具体的には、見積作成を手伝う、簡単な見積を作る、営業担当者が受けてきた案件について協力会社へ依頼する、といった仕事です。営業担当者が抱えていた準備や調整の一部を、社内で分担できるようになったのです。

見積資料を準備した営業支援担当者が、外出する営業担当者へ書類を渡している
事務の効率化で生まれた時間を、見積作成や営業支援へ。

その結果、営業担当者がお客様を回る時間を増やせるようになり、売上の向上にもつながりました。

この事例で見ていただきたいのは、事務作業を担う人数の変化と、その後の役割の変化です。時間に余裕が生まれた人が営業を支え、営業担当者がさらに活動できるようになる。会社全体の仕事の回り方が変わったことに意味があります。

生まれた時間を、何に使うかまで考える

業務改善では、「この作業を何分短縮できるか」に目が向きます。効果を確かめるためにも、作業時間を把握することは大切です。そこに、もう一つ加えていただきたい視点があります。

「時間ができたら、誰に、どんな仕事を任せたいか」です。

営業担当者なら、お客様の困りごとを聞く時間。事務担当者なら、見積や提案を支える時間。現場のベテランなら、若手に作業のコツを伝える時間。会社によって、今こそ時間を使いたい仕事は違うはずです。

新たな仕事へ振り向けるだけでなく、残業を減らす、急な依頼に対応できる余裕を持つ、といった使い道も考えられます。ここで挙げたものは、自社で検討するための例です。

先に使い道を考えておくと、どの作業から改善すればよいかも見えやすくなります。社員の皆さんとも「この仕事に時間を使えるようにしたい」と目的を共有できるのではないでしょうか。

最初の一歩は、作業を一つ選ぶこと

デジタル化と聞くと、大きなシステムの導入を思い浮かべるかもしれません。まずは、身近な作業を一つ選んでみてください。

例えば、同じ情報を何度も入力している作業。毎月、同じ手順でExcelをコピー・貼り付けしている作業。誰かに聞かないと状況が分からない仕事。こうしたところに、改善の入口があります。

既に使っているソフトの機能を活用する方法もあれば、情報を共有するだけで減らせる手間もあります。受注メールの整理など、生成AIに手伝ってもらえる作業もあります。仕事の内容に合わせて、方法を選んでいけばよいのです。

二人の従業員が機械の図面を広げ、互いに指し示しながら話し合っている
生まれた時間を、図面の確認や技術を伝え合う時間にも。

選んだ作業について、誰が、どのくらいの頻度で、どれくらい時間をかけているかを確かめます。そして、小さく試して、本当に楽になったか、確認の手間が増えていないかを見ていきます。最初から全部を変えようとせず、一つ改善して、次へ進む。その積み重ねが大切です。

まず、二つの問いから始めてみませんか

人不足への対応として、今いる人の時間をつくる。その時間を、お客様への提案や現場の育成など、会社に必要な仕事へ振り向ける。これが、この連載を通じてお伝えしたいデジタル活用の考え方です。

まずは、社内で次の二つを話してみてください。

① 時間ができたら、誰に、どんな仕事を任せたいですか?
② その時間をつくるために、減らせそうな作業は何ですか?

そこに、自社が取り組むべき改善のテーマがあるはずです。

次回は、電話・FAX・メールなど、身近な仕事の流れを題材に、小さくデジタル化を始める方法を考えます。その後も、受注メールの整理、Excelの定例作業、進捗の共有、技術の記録など、現場で試せる方法を順にご紹介していきます。

株式会社エムティブレインでは、中小企業の業務改善やデジタル活用をご支援しています。「自社なら、どこから手をつければよいか」という段階から、お気軽にご相談ください。